日記形式苦手なんで対話篇にしました。別名禅問答。
対話篇的プロット
ⅰ)石と意思
イヴィエズラ/「角が丸くなった」という言葉知ってる?
最近思ったんだけど、私の心は四角形なのかもしれないなーって。
それでね、その心の中の角っこの、言葉とか感情が、自分や周りの人を傷つけちゃうから、そんなの要らないからって、角を切り落としてきてたみたいなの。
でね、川底の石は丸くて手触りが良いよね。やっぱり角が取れてるから。
ラグチカ/じゃあ角が取れると和らかくて良いのかな?
イヴィエズラ/私も最初はそう思ったんだけどね、違ったみたい
河原の石はね、どんな時も自分で自分の角を切り捨てることはしなかったの
ただ、流れに抗って、他の石と争って、周りの世界にぶつかって欠けたり削れたりしながら、そうやって、やっと、少しずつ丸くてすべすべの石になっていくの
ラグチカ/そしたら自分で角を取るのはダメなのかな?
イヴィエズラ/んっとね、それなんだけど、丸くてすべすべな石だけが良い石ってことでも無いのかも。
自分で自分を削るとね、丸く綺麗には削れないんだよね
「四角形の中にある四角形」って見える?
ラグチカ/んー……「菱形」?
イヴィエズラ/そう、菱形。四角形を削ったとしても下手っぴな削り方だともっと鋭角になったり角が増えちゃったり、なのに自分の心は削れていってしまうの
だけどね、自分の好きな形に自分を削れるのも自分だけなんだと思う。
ⅱ)鏡、体の地図、心の地図。
すごく大きな感情が溢れそうになった時、必死に飲み込んだ時の話。
ラグチカ/誰かを好きになった時とか、テレビの悲しいニュースを見た時とか、自転車で転んじゃった時とか、頭の脳みそのある所より、もっと後ろの方から、凄くおっきい感情がブワーってなったりしない?
私はそういう時ね、言葉と心を飲み込んで、自分の心の中にある鏡を見るようにしてるの。
そうやって写した自分の姿を見てやっと「あぁ、好きになっちゃったんだ、悲しかったんだ、寂しかったんだ」って分かるんだ。
だけど、だけどね、気づいた時にはいっつもそれを伝えたい人は私の声の聞こえない所に行っちゃう。
他の人をジーっと見てたら、他の人はあんまり言葉を飲まないみたい。
思った事がそのまま体と繋がってる、っていうか。
イヴィエズラ/ラグは「身体の地図」って知ってる?
ラグチカ/んー…知らない。
イヴィエズラ/ううん。それは言葉を知らないだけ。ホントは知ってる事だよ。
ラグは目を瞑った時に自分の手足が何処にあるか分かるでしょ?
それが「身体の地図」。
人はね、鏡なんか見なくても自分の身体をちゃんと見えてるんだよ。
もし目が見えなかったとしても、それでもやっぱり、毎日一番触れて、聴いてるんだもの。
心もきっと同じなんだと思う。自分の気持ちからわざわざ距離を置いて目を凝らさなくても、もしその時、間違っているように感じたとしても、多分本当の自分のその時の気持ちは、そんな事をしなくても、分かってるし、伝えられると思うよ。
ラグチカ/伝えちゃダメ。
イヴィエズラ/どうして?
ラグチカ/だって、もし伝えたら、きっとまた一人ぼっちになっちゃう。
イヴィエズラ/でも、伝えなきゃラグの中の「好きになった自分、こわかった自分、寂しがりやな自分」はずっとひとりぼっち、なんじゃないかな。
…なんて、言われなくても多分ラグはもう気付いてるもんね。
だから今私達はこうして喋ってるんだもん。
Ⅲ)メンヘラ
バンドマン/俺多分メンヘラだわ。
ニート/は?
バンドマン/いや、なんかこないだ死ぬ前にさ、何人かの知り合いに今まで自分が経験してきた事を話したんだよね。
したっけさ、なんか納得されちゃって。
ニート/ほう?
バンドマン/うん。納得。俺が自殺する理由に対する納得。自殺はいけないとかじゃなかったんだよね。
ニート/止めて欲しかったのに期待外れだったな?
バンドマン/まぁそっち方面ではね。でも俺の自殺を止めるってめちゃくちゃリスキーな行動じゃん?
だからまぁ、そりゃ本音を言えば「結局そんなもんかよ」と思わなかった訳でも無いけどさ、でも「まぁ仕方ないな」って。
ニート/メンヘラと言う割には随分物分かりの良い考えだな。
バンドマン/そうなのよ。だけどさ、なんかめちゃくちゃメンヘラな友達がこの前出来てさ、俺ソイツに「ホントはメンヘラでしょ」って言われて何も言い返せなかったのよ。
ニート/でもソイツらとお前は違うだろ?
バンドマン/行動はね。でもさ、求めてるものは同じだったんだよ。
俺は他人を求めないようにしてるし、自分の幸福より他人の幸福を願うようにしてる。
所謂、構って構って〜ってやって周りを不幸にしてでも自分の幸福を求めるタイプのメンヘラとは、そこは逆。
でもさ、ホントは寂しいし、辛いし、不幸だと思ってる。
だってさ、どんなに楽しい一日を過ごしたとしても、悪夢を見て叫びながら起きるんだぜ?どれだけ幸せになろうが、俺1人じゃこの不幸からは逃げられないよ。
でもさ、だからといって、いや、だからこそ「じゃあ、自分の中にあるそんな不幸に、他人を巻き込めば幸せになれるのか?」って言われたらそういう訳じゃないだろ。だって、それは唯々不幸な人間が増えるだけだろ?
それなら——
ニート/だから、せめて人を傷つける前に死のうってか。
——ん、まぁ、カッコつけるならそんな言い方も出来るけど。でも、もっと根底の部分にあったのは疲れと諦めだったな。
もうえええわ、みたいな。
ホントね、疲れてたんだよな。怒るのも我慢するのも。伝えようと試行錯誤するのも。
だってどれだけやったって何も変わらねぇんだもん。
ニート/ん、でもさ、それを理解してくれたんだよな。失踪前夜に話した相手は。
バンドマン/そう、それなんだよ。
なんかさ、もう「あーーー」って気持ち。
ニート/なんじゃそりゃ。
バンドマン/幸福と不幸のダブルパンチを食らったときの感嘆の声的な?
ニート/で、どうすんのよ、これから。
バンドマン/他人を求めてみようかなって思ってる。
ニート/不幸にしたくないんじゃなかったのか。
バンドマン/建前だよそれは。本当は自分の怒りや悲しみみたいな弱さのせいで避けられて、また一人ぼっちになるのが怖いだけ。
だから本当に一人ぼっちになろうとした失踪前夜は言えたし。
ニート/死ぬ気でやれば、ってあながち事実なのかもな。
バンドマン/まぁやけっばちだよ、ただの自暴自棄。たまたま上手くハマったけど、俺は死ぬ気でやるより、生きる為にやる方が人間らしいと思うよ。