葦は明日を考える。

一人の人間が考えた『明日』を、つらつらと書き連ねます。

面白そうなテーマをいくつか

 

面白そうなテーマを幾つか思いついたのでメモしておきます

これを読んだ人にどれか一つでも引っかかると嬉しいですね!

 

①.世間と関わらないメリット

Ⅰ.情報が入らないので物欲が刺激されない、これは金銭的なメリット

Ⅱ.他人と比較出来ないので劣等感を感じる事もない、これは精神的なメリット

 

と考えると社会から離脱する事は有意義なように思えるが俗に言われるのは「孤独は人をおかしくする」という事

しかしそれを「おかしい」と定義しているのもまた社会

もしかしたらこの孤独故の異常さというのは人間を社会的な生き物としての定義から外して一つの生き物や人格として考えたらごく自然な事なのでは?

 

この異常さで良くある話は「見えないものが見えるようになる」「攻撃性が増す」といった話だが、もしかしたら「社会」というものが本来見えていたはずのものを覆い隠しているだけなのでは?

 

②自由ってホントにいい事なの?

自分は食欲や性欲に支配されて暴れている人間を見て「グロいな〜」と思ったりするのですが

じゃあ支配が完全にない状態、つまり食欲も性欲もない完全な自分だけの世界ってのがあるとして

それは鬱状態と同じじゃないか?

例えばホルモンバランスによる精神の昂りや落ち込みも無くなるけれど、それらは大いに自己の人格形成に関わっているわけで

というかそれら自分の肉体的な部分、所謂本能とされる部分と精神は切り離して考えることなんて出来ないんじゃないかと

しかしそれらが自分を支配して振り回す事があるのもまた事実

というか「自分が自分でありたい」「支配されたくない」なんて気持ち自体それらに支配されているから思う事なのでは?

そもそも自分なんてものはなく自分が自分だと思っているものなんて全てただ細胞に電気が通った時の火花なのかもしれない

でも自分と本能を切り分けて考えるべきではないなら、自分と空間、自分と他人、自分と世間も同一として扱うべきじゃないか?

 

③情報、熱力学的死を迎えそうじゃない?

インターネットというものが生まれて僕らは情報の温もりに触れる事が出来るようになりました

そして遠い距離でもお互いがお互いを認識できるようになり他者との繋がりが増えました

(僕はインターネット以前を知りませんが)

でもさぁ情報も他人との関係も飽和し過ぎじゃない?

でもそれ以前には戻れない訳で

ところでエントロピーって雑にいうと「乱雑さ」の値なんですけど、今の人間の関係性ってこのエントロピーがすごい高まってると思うんですよね

他人と自分がぐちゃぐちゃに混ざり合って、正しさと醜さも混ざって、強者が弱者で弱者が強者で

そしてそんな混乱が新たな混乱を呼んで

熱力学の世界では限界までエントロピーが高まると、その時点で変化は起こらなくなり死を迎えると言われていますが

人間の熱力的死はきっとlcl化でしょうね

んでさ、エントロピーって不可逆的に増加するんすよね

つまりこの値は一度増えたが最後下がらないって事

僕らは何も知らなかった猿には戻れない

見えていたものが見えなくなってもそこにあることを僕らは知っている

 

いやでもさぁマジで変化し続けるって大事なことで、いや確かに最後には安定を求めたい気持ちもあるんだけども、安定は死なので

でも僕の意識は生きてる間しかないわけじゃないですか

死んだ後の自分は自分じゃないんですよ

まぁよしんば死ぬのは構わない、というかむしろ求めてる節がありますけれど

どう死ぬかって大事じゃないですか?なんつーんだろ、体操の着地が評価に影響するみたいな

こう人間って相反する矛盾の中で揺れながら「その中で1番自分が安心できる事ってなんぞや」みたいなのを求めますし、安定する事、しない事のどちらかを求めますけど、ちゃうんじゃないなぁと

揺れて止まるまでが大事だって話じゃないですか

A点からB点に移動するグラフってのが人生の簡略化した図ですけれど、その中で大事なのってA点B点じゃなくてその2点を繋ぐ線じゃないですか、それが人生なのでは?と思うんですよ

 

なんの話してたっけ

 

定期的な発作

人間に意思決定能力は存在しない!!

んなわけあるかい!と言いたくなりますがコレは残念ながら事実でございます

 

まぁいつもの如くイジメの話から入るのですが

やっぱ1番身近な悪例だからね!

 

これはTwitterで見たのですが

イジメ被害者が強く加害者を恨んでいるツイートを読んだんです

曰く加害者の家庭環境に問題があったとか

周囲の倫理観が歪んでいたとか

 

いえ、それらを否定するつもりはないんですよ?

ただ本質的な問題はそこじゃないと僕は思うわけです

 

いじめってのはある程度の集団で起こる現象ですよね?

そしてその集団に属する人間全員が家庭環境が崩壊してる、なんて事あります?

まぁ割合として多い、位なら分かりますけど

 

それに過激さに差異はあれどイジメと言う現象自体はどこにでも散見するものですよね

倫理規範や個人の環境は「その集団/個人がどのようなイジメなら許容できるか」を決めるだけであって「イジメをしてはいけない」とは言わない、という事です

戦争で人を殺すときは非人道的な兵器は使っちゃいけないみたいな話ですな

 

ではですよ?何故イジメは起こるのかという部分に戻りますが

これはつまり「集団」というものの性質がそうだから、という事な訳です

 

ここからが主題であり1番面白い部分なのですが、昔ある実験をした人が居まして

「アッシュの同調実験」と呼ばれている実験です

 

論文なんかは読んでいないので難しい話は自分で調べて欲しいのですが、簡単に実験の内容を説明しますと

 

まず数人の集団を形成してもらいます

そしてそのうちの1人が実験対象で後の人間は全員サクラです

そして選択式の問題を提示します

問題の内容は明らかに正解がはっきりと分かるものです

サクラは全員間違えた回答をします

この時に被験者は正しい回答を答えられるのか?

 

という内容です

 

この実験は実に恐ろしい結果が出まして

なんと被験者の7割強の人間が、明らかに間違えてた回答にも関わらず不正解を選んでしまったのです!

 

もう一つ面白い実験があります、ミルグラム実験という実験です

アイヒマン実験とも呼ばれています

 

こちらは2人の人間を教師役と生徒役に分かれさせて監視役の元行う実験です

教師役の人間が被験者であり他の人間は全てサクラです

説明が難しかったのでwikiからコピペ

 

被験者たちはあらかじめ「体験」として45ボルトの電気ショックを受け、「生徒」が受ける痛みを体験させられる。次に「教師」と「生徒」は別の部屋に分けられ、インターフォンを通じてお互いの声のみが聞こえる状況下に置かれた。被験者には武器で脅されるといった物理的なプレッシャーや、家族が人質に取られているといった精神的なプレッシャーは全くない。

「教師」はまず2つの対になる単語リストを読み上げる。その後、単語の一方のみを読み上げ、対応する単語を4択で質問する。「生徒」は4つのボタンのうち、答えの番号のボタンを押す。「生徒」が正解すると、「教師」は次の単語リストに移る。「生徒」が間違えると、「教師」は「生徒」に電気ショックを流すよう指示を受けた。また電圧は最初は45ボルトで、「生徒」が1問間違えるごとに15ボルトずつ電圧の強さを上げていくよう指示された。

電気ショックを与えるスイッチには、電圧とともに、そのショックの程度を示す言葉が表記されている。記録映像の残るある実験では以下の表記がなされた。

 

はいコピペ終わり

この実験は450ボルトまで電圧が用意されおり、15ボルトごとにその電圧の危険度が表示されています

そして

 

この実験は40人の無作為に選ばれた人間に対して行われましたが、そのうち26人が450ボルトまで電圧を上げました

生徒役が苦しそうな悲鳴を上げているにも関わらずです!

 

これらの実験結果から分かる事は集団と権威が重なった時人は選択を放棄するという事です

 

さてさて面白い知見を得たところで一旦イジメの話に戻りましょう

 

「イジメ」という言葉を使っていますが、始まりはきっと無視やばい菌扱い等のタチの悪いジョーク程度から始まったはずです

 

例えば雑巾が牛乳臭ければ何人かはばい菌扱いしますよね

勿論気分は悪いですが殊更取り立てて扱うような事柄ではないと言えます

 

しかしそれが許されている状況は側から見ればその様子は強者と弱者、少し穿った見方をするならば「権威」を感じます

そして1人また1人とその輪に参加する訳です

例えるなら共通の知り合いの噂話で盛り上がるように

 

楽しいですからね、そういうの

しかも権威のおまけ付き

 

しかしそれが集団となるとジョークでは通らなくなってきます

先ほどの実験結果にも出ている通り間違った答えも集団が望めばそれが正解になるのが人間です

つまり多数の人間から否定された場合それが「事実」になる訳です

そして周囲の人間もそれが事実であるかのように受け止め始める訳です

 

こうなってくるともうどうしようもなく

人間は別にばい菌にはならないが!?という真っ当な意見も権威と集団の前では意味を持ちません

 

でもコレって誰が悪いんでしょう?

ぶっちゃけ誰も悪くなくないですか?

 

僕もいじめられてましたけど意外とイジメに参加してる奴って個人個人で話すと普通だったりするんですよ

まぁ僕の場合そう考えろって教育の本生きてたのでだいぶ認知が歪んでて信用ならないですが…

 

あ、コレも大人っていう権威か…

この話面白いんでまた後で話します

 

まぁそんで話を戻すとですね、イジメが起こってる状況において「誰が悪い」ってのはナンセンスだと思うんですよ

「集団」になって「権威」を与えられると人間どう頑張ってアホになるってのが事実なんですから

 

だから民主主義ってクソなんだよな

あ、この話も後でします

 

しかしですよ、それでどうしようもないわって諦めるわけにもいかないですよね

 

なのでちょっと集団への対策を考えてみたのですが、あまり芳しくなく…

 

例えば戦争を例に上げれば少数で多数を駆逐した例というのはあります

一対一を10回繰り返す、という方法ですね

しかし相手の頭数を減らすなんて土台無理な話なんですよ、殺人は犯罪ですから

 

もう一つは相手より大きな集団を形成する、という方法でしょうか

しかし学校という閉鎖された環境ではそれは難しいですよね

イジメられてる状況って既に誰も被害者の話を聞かないですから

他の場所から人を説得するにも別の学区の人間を自分の学校に連れてくるわけにもいかないですし

 

一つだけ救いがあるとすれば学校は民主主義ではない、という事でしょうか

いや、民主主義ではなかったの方が正確ですかね…

 

これは体験談なのですが、僕の所属していた吹奏楽ではイジメみたいなのはほとんど無かったんです

僕の事を毛嫌いしていた人も所属してましたが、吹部の時間は最後まで何も言ってこなかったですね

これは吹部の先生の力が強かったというのが大きいと思います、めっちゃ怖い先生でしたから

そして学校で唯一僕の味方でいてくれた先生でもありました

 

つまりある種独裁主義の方がイジメは発生しないという事です!

これは人間の権威への弱さが良い方に出ているパターンですね

しかしトップの倫理観に依存するのでドイツや北朝鮮のような失敗も起こるわけです

 

僕らは自分の意思で物事を決められると思い込んでいますが、個人の意思は集団の前ではあまりに脆く脆弱です

社会に所属しない生き方もインターネット全盛期の現代では不可能でしょうね

 

そんな中で集団と権威による意思なき暴力から身を守るには、また自分も意思を捨てなくてはいけないという矛盾

人間は早く技術の進歩に追いつかなければいけません

 

はー、人類マジ愚か♡

 

こっからは超個人的な話!

この話を書こうと思った時に気づいたのですが、僕って全く少数派じゃないんですよ!

というのもですよ、僕がそれこそイジメにあってた時に親によく「相手の気持ちや立場も考えろよ」とよく言われてまして

同時に「お前は視野が狭く物事を多角的に見れない」とも言われてました!

で僕は考えた訳ですよ、多角的視野とは相手の気持ちとはなんぞや?と

引きこもりながら考え続ける訳です

引きこもりだから誰も修正してくれない訳です

そうして曲解に曲解を重ねて歪みに歪みまくった認知で僕は理解しました!

逆張りしろって事じゃね?」と

 

まぁ間違ってないけどさ…

例えば何かを選択する時にそのリスクについて考える事は多角的視野ですけども!

車に轢かれた時に「うわぁ、相手の車凹ませちゃった…どうしよう」って考えるのは相手の気持ち考えてますけども!

 

こうして限界スーパー逆張りオタクが生まれた訳です

権威を見れば噛みつき集団を見れば斬り込み民主主義を見つければシベリアに送りたがり…

でもコレって全部自分が「権威主義でミーハーで日和見主義の民主主義者」だからなんですよ!

 

ウォッチメンのコメディアンやバットマンのジョーカーに対して共感を感じれるのが唯一の楽しさでしょうか

彼らは露悪的なパロディを自ら行って、それを鏡で見て笑うような人間でしたし暴力を持って他人を排除する事を厭わない人間でしたが、その実何かと対称性を持たなければ生きていけない、他人に依存した生き方をしていました

コメディアンなら時代、ジョーカーならバットマン、それぞれが相手がいて成り立つ存在です

 

つまり何が言いたいかっていうとですね、僕も含めてコイツら全員中身がないんすよ!!!

だってただの逆張りオタクだから!!!

 

僕もただ集団のパロディを1人でしてるだけで全然ロックじゃねぇし!!!

 

といったところで自分の自我が揺らぎ始めたので次の話

 

いやマジで民主主義ってクソなんすよ

その話をする前に損失回避の法則について話しておきましょう

といってもそんな難しい話じゃなくて、ただ「人間は得をする選択肢を選ぶより損をしない選択肢を選ぶ」ってだけの話です

そして先ほどの話、雑にまとめると人は権威の元に集まると意思がなくなるという話でした

そしてトドメの話、集団極化という現象です

人は集まると良くも悪くも過剰な行動に出るという話です

つまり!民主主義とは!

「バカが過剰に損切りする」政治に他ならない!!!

まぁ流石に言い過ぎですけど、どん詰まりなのは間違いないと思いますね

少なくとも現実に乗っ取った行動は不可能でしょう

正しくない損得勘定で過剰な行動を起こす訳ですから

そしてその行動の責任は誰も取らないんですよ!?

僕はね思いますよ

「政治家って民衆のやらかしの責任取るために首切られるのが仕事なんじゃね?」って

だって決定権を持ってるのは政治家じゃなくて民衆なんですから政治家は何も決められない筈なんですよ

 

さぁみんなで独裁主義の共産主義を目指そう!

勿論元首は民意を正しく反映してくれるaiです

 

大丈夫、僕らは既に独裁主義の共産主義を知っています!

親父が勝手に子供のパンツ履いてビロビロに伸ばしたので家の貯金でパンツ買う、コレが共産主義です!

親父が尻に敷かれてる専業主婦のかかあ天下、これが独裁主義です!!

ネットの情報を見て芸能人をボロクソにリンチする僕ら、これが反映された民意です!!!

 

紅茶でも飲み干して静かに待ちましょう

 

歩み寄れる程近くはなく無視できるほど遠くもないクソ広大なインターネットの腐海の話

インターネットってクソですね

 

僕ずっと使ってるTwitterのアカウントが一つありまして

最近そのアカウントを運用していて気づいたことが一つあるんです

それは…

引用リツイートでお気持ち表明するとめちゃくちゃ創作意欲が湧くしワンチャンバズる!!

 

ただ僕自身の信条としましては、争いは避けられないとしても相互理解を諦めたくないし、それが出来ないのならせめて、争わないで済む様に遠くに離れていたい、と思うわけです

 

話は変わるのですが、壁の薄い集合住宅ってあるじゃないですか、騒音問題がよく槍玉に上がるタイプの

 

昔僕は団地に住んでいまして、まぁボロなので割とガンガン音漏れもする家屋だったんですね

で当時の僕はピアノを習っていましたのでガンガンピアノ弾いてましたし、なんなら今以上に精神が不安定だったので毎晩毎晩暴れ回ってモノをひっくり返しては叫んで、泣き疲れて寝るってのを繰り返してたわけですよ

近所のクソガキがうちの窓割りに来たりもしてましたし

ただ不思議な事に一度も騒音で苦情が来たことはなくて

確実に音自体は聞こえたいたんですよ

隣のおじさんがよくピアノ褒めてくれてたので

 

そんで現在当時よりも多少良いマンションでギターを弾いて歌っている訳ですが、まぁ苦情が多い

いや一応夜とかは避けてるんですよ?ベロベロに酔ってなければ声もあんまり出さないですし

 

この違いって多分なんですけど、団地には自治会があるのに比較して今住んでいる所はそういった地域のコミュニティみたいなのが全くないってところに理由があると思うんです

 

うちの親は団地の時は一応自治会に所属していて、僕自身のその関係で割と団地の人に可愛がってもらっていましたので、僕自身が抱えてる問題を理解してくれていたんですよね

それにこっちも向こうの都合を知ることが出来るのでお互い譲歩する余地があったんですよ

 

それに比べて今住んでいる所はそういった関係が希薄なので、どうしたってお互いに譲歩する余地はない

譲歩できないなら争うしかない

 

何かに似てませんか?

そう、インターネットです

 

インターネットの争いってこの集合住宅の騒音争いに似てると思うんですよ

最近僕が良くよく見かけるのは男女の溝についての争いですが、それ以外にも沢山の争いがありますよね

そしてそのどれもがお互いに住んでるところも思想もコミュニティも違う相手と争っているんです

 

おかしいだろ?他人だぞ?

 

僕らはインターネットという狭くて壁の薄い欠陥集合住宅に押し込められた住人なんですよ

本当だったら無視できる相手と戦ってるんですよ

しかもタチの悪い事に個人同士の戦いがすぐにその当人たちの所属するコミュニティ同士の戦いに発展しやがる訳です

 

その戦いを見るたびにそりゃどう頑張ったって理解できない相手ってのはいるけど、こんなに多い訳ないだろうと僕は思うのです

 

多分こうして戦ってる奴らも1人1人で会えば面白いヤツだったりするんですよ

まぁ最悪クソつまんないヤツだなぁ程度で済むはずなんです

なのにインターネットでは互いの思想や属性でしか相手を計れないから、こんなに血みどろの戦いをしなきゃいけなくなるんです

そりゃそうでしょうよ、ありとあらゆる文章の「ソイツが何故何故に」それを言ったのかという部分がマルッと抜け落ちてるんですから

そりゃネットリテラシーに気をつけて話せば炎上はしませんけど、ここでもう1つ問題になるのが、炎上した方が味方も金も増えるというところです

 

何を語るにしても「僕個人が」と言う語り口よりも「俺たちは」という主張の方が通りやすいですし責任も分散されますから気が楽ですよね

それにバズれば金に繋がる

 

万人による万人の闘争と言いますが、それをコミュニティ単位で、しかもそのコミュニティを次々と乗り換えて争い続けてるのが今のインターネットです

これが人間のむき出しの無意識と社会性です

 

もうさ、社会なんていらなくねぇか

政治とか経済とかもうよくねぇか

金なんて全部燃やしちまった方がみんな幸せになるんじゃないか

メガネかけてるやつはみんな死刑でよくないか

 

多分今問題になってる男女や見た目での争いってのはそのうち無くなるとは思うんですよ

ただでさえ整形や加工も流行ってますし、そのうち肉体をマルッと入れ替えられたなら少なくとも肉体による差別と争いはなくなるとは思います

でも同時に今このままインターネットが発達していけば僕らはより近しい存在になって、自己と他人の境界線も曖昧になり、その不気味さ故に周りを囲む人間全てと戦わなくてはいけなくなるでしょう

差別や区別はATフィールドなんです、僕らは本質的にLCLにはなりたくないのです

そして差別のネタは探せばいくらでも見つかります

例えばIQなら肉体を入れ替えたとしても変わりませんから、次はそこでの差別が始まるでしょうね

もしくは遺伝情報による差別でしょうか

 

僕らが他人である以上争いはなくなりません

でも同時に相互理解の機会もそれだけあると言うことです

 

それでももしこのまま人間の未熟な社会性が暴走し続けるとしたら…

 

次のポルポトが生まれるのも時間の問題なんじゃないかと思います

生きる事はクソだという話

これはつい先ほどの話なのですが、めちゃくちゃ巨大なウンコが出まして

 

そして亡くなった祖母が言ってたのですが、どうやら僕は生まれつきケツが弱かったらしく

「この子は将来痔になるねぇ」と

 

案の定先程もトイレに真っ赤な大輪を咲かせたところでございます。

 

いやねぇ、例えばリスクある行動をした結果傷つくのは仕方ないと思うんですよ。

大好きなあの子に一世一代の告白をして振られて傷つくのはね、もう仕方ないんすよ。

ムカつくやつに飛び蹴りかましたら3人がかりでボッコボコにぶん殴られてしょんべん漏らして泣きながら帰るのも、まぁ仕方ないんすよ。

 

俺はぁ!!!ウンコしてるだけなの!!!!

ウンコくらいノーコストでさせてくれよ!!!

 

まぁでもですよ

世の中ってそんなもんなのかもしれないな、とも思うわけですよ。

生きてく為には家賃を払わなきゃいけない、美味い飯は太る、道を歩くだけで転んで怪我する。

 

多分ですけど人生生きてって死ぬ間際に不幸と幸福の数を比較したら不幸の方が圧倒的に多いんです。

つーか生まれた時点で負け!赤子が泣くのは生まれ落ちた不幸故に!!!

 

まぁひどく偏った考えではありますが、概ねそんなものだと僕は思うわけです。

 

それと引き換え幸福ってのはどうにも努力やリスクと引き換えなければ手に入らないもので。

焼肉は高いし臭いし太るし、勝負事は常に負けと隣り合わせだし、大好きなあの子の好きなアイツは文武両道完全無欠だし

唯一オナニーだけは時間という(人によっては)ほぼ無価値なものとのトレードオフなのが救いでしょうか。

 

まぁここで諦めても良いかなぁと毎日考えたりもするわけです。

これニヒリズムね。

 

まぁでもですよ、死ぬのってのも意外としんどいもので

フラッシュバックってフィクションの中だと割と綺麗に描かれてますけど、ノンフィクションにクソみたいた人生を送ったやつはもう一度同じ不幸を味合わないといけないんですよ。

 

せめて走馬灯くらい楽しく見させろや!!

こういうとこホント設計ミスだと思う

 

なんの話でしたっけ、生まれた時点で負け組って話でしたっけ

 

まぁつまりですよ、僕らは生まれた時点で降りる事も難しい賭けの卓にマイナス背負って座ってるわけです。そして生きていけば生きていく程その負債は増えていくんです。

なのに幸福にならなきゃ、勝たなきゃ死ぬ事もままならないわけです。

 

もうそうなったら賭け事自体を楽しむしか、負けたってそれでも楽しかったと思うしかムリなんです。

そりゃ勝てればバンバンザイですけどね、賭け事なんて負ける確率の方が高いんですから。

 

だからですよ、我々人間は生まれてしまった以上ケツを拭く度に染みる痛みを楽しむしかないわけです。

 

ps今日の切れ痔占いは…ハート型の貴方は恋愛運アップ!憧れのあの子と痔の三段活用の話で盛り上がろう!

 

アイドルを宗教として考える

 

アイドルに心酔してる奴らが憎くて仕方がない…!

 

どうもプロ弱者男性です。

そういや友達に見せるためにブログ作ったんだわ…

っつーわけで宗教の話です。

 

 

現代の日本では宗教というものに対してある種の忌諱感が漂っているように感じます。

反面アイドルは若年層を中心に非常に多くの支持層がおり市民権を得ている現状です。

 

まぁでもさ、思っちまう訳ですよ。

アクスタとかね、フィギュアとか、お前それ偶像崇拝じゃん!!!

 

まぁなので宗教とアイドルを同一視出来れば、宗教に対しての忌諱感も薄まると同時に、アイドルに対しての危険性もある程度啓蒙できんじゃね?

 

てな感じで穿った思考でその両者を見ていきたいなと思います。

 

 

 

さてさてこれを考えるにあたってですが、アイドルは学問として体系化されてないので宗教の定義側からまずは詰めてみたいと思います。

 

Wikipedia曰く

『宗教(しゅうきょう、(英: religion)は、一般に、人間の力や自然の力を超えた存在への信仰を主体とする思想体系、観念体系であり[1]、また、その体系にもとづく教義、行事、儀礼、施設、組織などをそなえた社会集団のことである[2][3]。』

 

ふむふむ

つまり「超越存在」があって、それを「信仰」していて、「教義や儀礼等の儀式的行事」があって、かつ「社会集団」である事と。

 

ではそれぞれ考えてみましょう

 

①「超越存在」

 

まぁ分かりやすい例を挙げるなら神様それ自体の存在ですが、それ以外にも色々存在します。

例えばキリストは死後蘇ったし釈迦は産まれた瞬間に立ち上がり「天上天下唯我独尊」と言はなちましたが、どちらも人間でした。

 

つまり「うわ、コイツヤベェぞ!」と思わせる伝説的要素があれば神様である必要はないという事ですね。

 

翻ってアイドル側の伝説を見てみましょう。

 

アイドルはうんこしない。

アイドルは結婚しない。

アイドルは皆んなを平等に愛してくれる。

 

なんだよコイツヤベェぞ!!!!

 

もう少し具体的な例を考えてみましょう。

しかし自分はアイドルには全くもって疎いので、ここは現代若者のマスト、YouTubeで調べてみましょう。

 

「あのちゃん エピソード」っと…

 

『あのちゃんは買ったばかりのiPhoneをバスケットボールと間違えてシュートした』

『オフの日のファッションはパジャマにビニール袋』

 

なんだコイツ!ヤベェぞ!!!

 

流石に超常現象ではないですが、現代人の感性で言えばある意味死後蘇るのにも匹敵するのではないでしょうか?

 

総じてアイドルは超越存在であると結論づけることが出来ると思います。

 

 

②信仰

 

そもそも信仰って何やねん

またWikipediaを活用していきましょう。

現代インターネットで検索出来ないのはあの子の気持ちくらいなモンです。

 

『信仰(しんこう、英: faith)とは、

キリスト教神学的には、神の存在と啓示を真実として信じる事[1]。
イスラム教では聖地 メッカへの巡礼「ハッジ」は一生に一度は果たすべき義務(モスク「マスジド・ハラーム」)
神や仏などを信じること。また、ある宗教を信じて、その教えをよりどころとすること[2]。
人やものごとを信用・信頼すること[3]。
証拠抜きで確信を持つこと[4]。またそれらを信じることを正当化する要因[5]。
信仰のことを仏教においては「信心(しんじん)」と呼ぶことが一般的である。「信仰」と書いて古くは「しんごう」と読んでいたこともある[6]。』

 

 

信仰の意味は条件や状況次第で少し違うことがあるようですね。

統括すると「信じる」という行為に重きをおかれているように考えられます。

とりあえずキリスト教での神をアイドルに置き換えれば概ね意味は通ると思いますので、それを採用してみましょう。

 

『アイドルの存在と啓示を真実として信じること』

アイドルはフィクションの中で『嘘』と同時に扱われる事が多いと思いますが、これは逆説的に「嘘だと自らに言い聞かせなければ信じてしまいそうになる」ということではないでしょうか?(野獣論法)

 

たまげたなぁ…

 

そもそも論ですが、楽曲『アイドル』にて「誰もが信じ崇めてる」という歌詞があるのでアイドルは『信仰』されるもの、という解釈に間違いはないとは思います。

てかアイドルのツイートでファンネルされる奴ら見てれば信仰だって分かるわな。

 

どーせこんな記事誰も読まねぇんだからテキトーで良いんです。

ざっくりサクサクいきましょう。

 

 

③教義、儀礼などの行事

これは考えるまでもなく「ライブ」や「ファンミーティング」などがその通りでしょう。

熱心なオタクの方達などは所謂「神棚」も作りますし、推しの誕生日は盛大にお祝いしますしね。

 

実に楽な項目でした。

 

次、最後の項目です。

 

 

 

 

④社会集団

 

これは昔と今では少し状況が違うと思います。

昔では聖地が存在してそこを中心に人が集まり集団を成していましたが、現代ではsnsを中心に人が集まっている印象です。

 

少し深掘りして考えてみます。

特定の社会集団に属している人間は大抵の場合は同じような衣服を着用したり、共通のアイテムを持っている場合があります。

 

宗教ではキリスト教におけるトンスラ(ザビエルのやつ)やマリア像

地域単位では日本の侍のマゲと刀なんかが分かりやすい例でしょうか?

 

一般的アイドルオタクを考えた時ですが、確かにチェックのシャツは共通していますが、アレは金がなくママに買ってもらった服を着るしかなくて着ているのでノーカンです。

 

女性のオタクは地雷系ファッションやブランドバッグなどの共通点はありますが、特定アイドルへのアピールとは違うでしょう。

エクステの色なんかには意味はあるように感じますが。

 

むしろ現代の主戦場はsnsです。

そう考えた場合特定アイドルを推している人は

「共通のアイコンを使用している」「共通のハッシュタグを使用している」

と見る事ができると思います。

 

マジでどいつもコイツもTwitterのプロフ欄真っ青だな…

 

つまり彼らは社会集団を形成していると言っても過言ではないと考えられます。

 

 

 

さてさてここまででアイドルと宗教の共通点を見てきましたが、逆に相違点はどこでしょうか?

 

大きな相違点はこの二つだと言えます。

 

①アイドルは実在している

宗教での信仰対象は伝説上での存在であったり、既に存在しない人間であったりしますが、この点アイドルは現存している存在を信仰していますので、大きな相違点と言えます。

 

つまり大川隆法が生きてた時の幸福の科学はアイドルオタクの集まりという事ですね!!!

 

②運営が営利団体である事

読んで字の如くです。

 

むしろアイドルと宗教の法律的境界線はここにしか存在しないとも言えます。

まぁ実際のところ宗教法人であっても多くの献金を募って実質的な営利団体である場合も多いですが。

某宗教の「コンドーム禁止!」は将来的な信者を増やす為の間接的な手段ですが、最終的には信者を募る事が目的となりますしその信者からも献金を募るのでしょうから上手い方法だと少し感心します。

気持ちいいしね!!

 

 

 

 

さてさて、飽きてきたのでこの辺りでまとめとしたいですが1つだけ気になる点があります。

それは思想の部分です。

 

宗教にはその宗教観に基づく「正しい行い」が定義されていますが、アイドル文化の場合はどうなのでしょうか?

まぁ繋がるな!献金しろ!みたいな風潮はありますが、アレがある意味教義なのでしょうか?

 

一度アイドル文化における聖書なんかを読みたいモンです。

 

以上でシメとさせて頂きやす。

 

 

 

 

 

 

俺も宗教法人目指そっかな…

 

 

 

 

 

 

小説的なアレ「ファンタジー」

序章
 
「奴を追え、今すぐ!」
 ガス灯が映える石畳の街に降りた闇の帳とばりを、固く無機質な靴音と駆動音、ソレらとは対照的な、ともすれば獣の断末魔にも近い怒号が切り裂いた。
「あれは……あれは、この国の、我々の最後の切り札だぞ……」
 怒号の主であろう老年の男は、周囲の兵士とは違う尊大な印象を受ける軍服を纏っておいた。男は、白髪交じりのしわがれた顔には到底似つかわしくない程大きな、軍服の上からでも分かる程鍛え上げられた大きな背中を子供のように震わせ、誰に言うでもなく呟いた。その傷だらけの手には真鍮製の素朴なロケットが握りしめられていた。
「隊長、我々はどうしますか」
 幾数人残った取り巻きの兵士の一人が、彼のその巨躯が嘘のように小さく見える背中に向かって問いかけ、彼の沈みかかった意識を引き上げた。
「あ、あぁ。俺とお前たちは、飛空艇に乗って奴を追う。悔しいが奴はこの隊の中で一番の操舵主だ。奴に追い付くには先に空に出るしかない」
 兵士の声で本来の冷静さを取り戻した男は、己の部下の犯した失態と、この事態による己の今後について考えるのを一度止め、目の前の問題を解決する為に、空挺のある倉庫へと向かった。
 
 男は軍人だった。しかもこの国の最高機密を任せられるほどの優秀な軍人であった。彼は戦場で名を上げ、その身一つでこの地位までたどり着く程の男だった。男は当時の戦場での話を宴会の席でよく部下に語っていた。曰く戦場で生き残る為に必要なのは鍛え上げられた肉体でもなく最新鋭の武器でもない、本当に必要なのは、恐怖に揺らがぬ精神を持ち全てを投げ打って死ぬまで生き抜く意志だと——しかし、それはほとんどの兵士達には剣で戦っていた時代遅れの老人が酒の席でふと語る、事実より美しく彩られたカレイドスコープの中の思い出のように聞こえていた。
事実彼自身も現在では、もはや意志で斬り合う時代はとうの昔に終わったと思っていたし、また自分も己の言葉とは裏腹に、そのような時代の流れを受け入れ始めていることに気が付いていた。そう、全てを投げ打ち最後まで戦ったとしても、何かを変えられるなど―――
だが、一人だけ、話していた本人ですらただの思い出話と切り捨てた話を今、強く鮮明に思い出している男がいた。街の路地を軽四輪蒸気駆動車で走り抜けるこの男は、隊一番の操舵主であり、また隊一の向こう見ずでもあった。
「よし、あともう少しで格納庫だ。怖いか。安心しろ、武装解除されたヴィンテージの飛空艇だが魔導式の飛び切り速い奴だ」
 男は上ずった声で、荷台で揺れる物言わぬ影に向かって言った。
 
 男の車は速かった。隊で所有している最も早い駆動車を選んだとはいえ、それは追ってくる元同僚たちも同じだった。にもかかわらず、男の駆動車は蒸気を噴き上げながら、路地を超え、階段を超え、他の兵士の追従を寸手のところでかわし続けた。
 確かに男の運転技術は優れていたが、その能力は飛空艇を駆ってこそ発揮されるモノだった。だが彼は自分の能力を過大評価していた。故に、いつもの如く、さもありなんといった様子で加速ペダルを踏み続けた。無知ゆえの度胸だった。また追手の兵士達も男の速さと無謀さには常日頃から舌を巻いており、今回の事においても半ばあきらめ気味に追跡をしていた。そのため、男は運良く追手に捕えられずにすんだのだった。しかし実際かなり無茶な操縦だったため車に掛かる負荷は尋常ではなく、街の端にある目的地が見える頃には、駆動車はあちこちへこんでおり、原動機は激しく蒸気を噴いていた。
 目的地が見えると男は、その逞たくましい足でより一層強くペダルを踏み込んだ。必要以上の力にペダルはひしゃげた。車体の揺れはより一層大きくなり、速度計は針が飛んでいきそうになるほど大きく、速く、左右に振れた。車は加速を続け、ついには目的地の格納庫へと突撃し、その勢いのまま壁へと叩きつけられた。
 男は頭から血を流しながら車を降りた。窓から投げ出されることを降りるというならばだが。
 車から降りた男は奇麗に五点着地を行うと、——―これも宴会の時に隊長が何度も話をしていた事だった――すぐに立ち上がり荷台へと駆け寄った。荷台にはロープで頑丈に固定された鉄製の箱があった。箱は男より少し小さい位くらいの大きさで、底には移動用の小さな車輪が付いていた。正面には丸い窓がボルトで固定されているが、中は暗く様子を伺うことは出来ない。
 男はその箱を急いで荷台から降ろすと素早く車から離れた。男が車から離れると、車が大きく燃え上がった。ペダルが壊れ限界以上の負荷がかかった原動機がついに融点を迎え、炎を噴き出したのだ。
「怖かったか? 大丈夫だ、あと少しだぞ」
 燃え盛る軍車が写る箱の窓をのぞき込み、男は静かにささやいた。
 
男は格納庫の奥へと進んだ。男は奥の飛空艇へ着くと、格納庫のシャッターを開けた。男の夕日のように揺らめく瞳に映った空は漆黒のコールタールの雲に覆われ、男にはまるで自分を飛び立たせないために誰かが空に蓋をしてしまったように見えた。上空では風が吹き荒れ、雲がゆっくりと泥のように流れている。いつもの風はあんなにも心地がいいのに、どうも今日の風はまるで、男の燃える意志を吹き消そうとしているようだった。男が太く濃い眉を曲げながら風を聞いていると風に運ばれて何かが走ってくる音と、数人の男たちの声が聞こえてきた。
———兵士達ががもうすぐそこまで来ている!
 男はすぐさま飛空艇のハッチを開けると、箱を押し込み操縦席へと飛び乗った。いくつかのレバーを上下に動かし、それぞれの機能がキチンと可動していることを指で指して確認する。「異常なし!」入隊したての頃からの癖でつい声を出してしまう。しかしその声を聞き表情を緩める者はここには居なかった。
次に燃料を確認する。この飛空艇の主な動力は魔導機関と呼ばれる代物なのだが、魔導機関を動かすには燃料となる鉱石、日緋色金ヒヒイロカネが必要であった。しかしこの鉱石は非常に希少価値が高く、帝都の中でもほとんどの産地は軍の所有であり一般人は近づけず、帝都の外に至っては、グラムで一月、キログラムなら一年、一世帯が働かずに暮らせる程と言われる物であった。故に最も重要な確認事項の一つなのだ。計器の目盛は5分目半の辺りを示している。軍の備蓄庫からくすねるのでは、これが限界だった。心もとないが、ゆっくりと飛べば何とか国境までは飛んでいけるだろう。
必要事項を確認し終えて、魔導機関に燃料を入れる。機関が独特の甲高い音を響かせ動き出す。男は数秒間目を閉じ、手を合わせると、小さくうなずき操縦桿そうじゅうかんを握りしめた。
 
男は雲の中を飛んでいた。雲の中は風が強く視界も悪い上に常に雷が飛び交っているため、余程の腕の者でもわざわざ飛ぼうという変人は少なかった。つまり身を隠すには好都合だったのだ。もっとも彼はその変人の中の一人だったが。
つい先ほどまで恨めしく思っていた雲や風だったが、今この時だけは自分を守ってくれる仲間のように感じられた。
しばらく飛んでいると、周囲の雲が少しずつ薄くなってきていた。これは工業の盛んな地域を抜け郊外に出たということを示していた。男が窓に顔を近づけて下を見てみると、月の光に照らされた黄土色の大地と、松明やカンテラの暖かい光に揺らぐ村々がうっすらと見えた。
男は、もはやこの雲にカモフラージュの能力は無いと判断し、少しでも遠くから発見されないようにする為、高度を下げ始めた。男は雲のベールを抜けると、ふと先ほどまで自分が居たあたりを眺めた。と、上空で何かが光っているものが見えた。最初、雲の隙間から差し込む月か星の光にも見えたソレは、段々とこちらへ近づいてきており、また、よく見ると赤く仄暗ほのぐらく光っていた。男はその光を良く知っていた。
男は大きく目を見開きソレを一瞥いちべつすると、手元のレバーを大きく倒し、魔導機関の出力を最大まで上げた。機関は甲高い音を上げながら、赤く仄暗ほのぐらく、光り始めた。
 
レバーを全力で倒しながら、男は己の三つの慢心を後悔していた。
一つ、男は自分の能力を過信しすぎていた。いくら腕が良くとも、冷静に事に当たろうとも、男の乗る飛空艇は所詮、民間仕様の武装解除された型落ち機だった。確かに余計なものを積んでいない分軍仕様の重武装艇よりスピードは出るが、しかしそれは、もし追い付かれた場合抵抗する手段が無いことを意味していた。
一つ、男の所属する部隊は帝国の研究所の配属であり、男の部隊はその研究所の警備の他に開発された兵器の試験なども担当していた。これは常に最新鋭の兵器を使えるという意味でもあった。実際に戦場で運用される兵器の為の堅実なテクノロジーとは違い、それ自体が目的となる研究所の技術において、その進化の速度は日進月歩だ。コストを度外視したら、ついこの間開発された兵器より優れた兵器が開発されるなど当たり前のことだった。しかし、これらのリスクについては男も重々承知していた。だからこそ男は雲の中を飛び、出来うる限り目立たないよう飛んできたのだ。
 最後の慢心は男に操舵と戦いのイロハについて教えた人物の事だった。その人物曰く、彼は銃がまだ使い物にならないような時代から飛空艇を駆り、剣を携え、勇猛の限りを尽くしていたらしい。男はその人物が酔った時にだけ話すこの話が好きだったが、その人物がこの話をする時のどこか遠い所を見ているような眼だけは好きになれなかった。というのも、その話に出てきた、燃えるような意志を湛えた眼をした男と、それを誇らしげに語りながらも、それがまるで若さゆえの過ちであるが如く冷たく自嘲気味に笑っている老人が、同じ世界を生きていたとは到底思えなかったからだ。
だが男は迫りくるソレから放たれる二〇粍ミリメートル徹甲弾を機体に浴びながら確信した。あの話の男は確かに、あの懐古主義に堕落してしまったはずの、あの隊長の、紛れもない真実の話だったのだと————
 
己の機関砲によって撃ち落とされた魔導式飛空艇が、仄暗ほのぐらい赤の明滅を途切れ途切れに繰り返しながら森へと墜ちていく様子を、燃えるような意志を湛えた冷たい目の老年の男が、張り付けたような表情で見つめていた。
 
 
 
一話
 
 木製の質素な家の庭で金属のぶつかり合う音と鋭く短い掛け声が幾度となく響く。二つの金属音は互いに少しずつ激しさを増していき、ついに一際大きな音を立て片方の音が遠くへと弾き飛ばされた。後に残されたのは、伸びをしながら余裕とともに吐き出される息と、それとは対照的な途切れ途切れの荒い呼吸音だった。
「実際よくやってるよ、お前は」
 鍛え上げられた広背筋を伸ばし、大きく息を吐きながら男は言った。男は古めかしい、しかし手入れの行き届いた曲刀を腰の鞘へと押し込んだ。額にうっすらと浮かんだ汗を手ぬぐいで拭くと、男の足元に突っ伏し背中を大きく上下させている少年の頭へ、その手ぬぐいを放り投げた。
「よくやってるって言ったって、こんなに手玉に取られてるようじゃ……はぁ」
手ぬぐいの下で少年が呟く。その表情をうかがい知ることは出来ないが、そのため息を聞けば、彼を知るおおよその人間が、への字に曲げられた眉と口を想像しただろう。
「お前はよくやりすぎなのさ。むしろもう少し楽をすることを覚えたほうが良い。でないと俺みたいな意地悪な人間には一生勝てないぞ」
白髪交じりの顎鬚を撫でながら、男は少年の隣にその重い腰を下ろすと、どこにあったのか、おもむろに酒瓶を取り出した。
「アルは、逆にもう少しちゃんとした方がいいと思うけどなぁ」
 少年はようやっと息が整ったのかゆっくりと体を起こすと、隣で酒瓶のコルクと格闘している男を横目で見た。手ぬぐいが落ち、少年の、目立たないがよく見ると目鼻立ちの整った端正な顔があらわになる。少年は、汗で額に張り付いた髪をかき上げると、疲れからとはまた違う深い大きなため息を吐いて立ち上がった。
「お、どこか行くのか」
 未だ空かない酒瓶と格闘しながら男が尋ねる。
「レンが祭りの飾りつけやってるから見に来いって。アルも行ってあげたら?」
「あぁ、こいつが開いたら行くよ」
 気の抜けた生返事が返ってくる。残念な事にこの男の興味は既に目の前の酒瓶にすべて注がれていた。妹のレンに、もしこのおじのアルトゥーロの今の様子について聞かれたときになんて答えようか。少しの罪悪感に頭を抱えながら少年は庭を後にした。
 
 町の広場では、祭りの準備が着々と進められていた。町の住人たちがせわしなく歩き回る間をすり抜けながら歩いていると、子供たちが民家の壁や屋根の軒に花を飾り付けているのが見えた。
「あ、リハムだ」
子供達のうちの一人が少年を指さして言った。少年がそれに気が付き手を振ると、その中の一人の少女が駆け寄ってきた。
「お兄ちゃんは今日のお稽古はもう終わったの? アルおじさんは?」
 少女は、曇りのない大きなグレーの瞳で少年———リハムを見上げた。リハムは、不思議そうに三つ編みを左右に揺らす少女に、恥ずかしいんだか申し訳ないんだか分からない、どうにも決まりの悪そうな顔をした。すぐに少女はその表情の意味を理解したのか、大きくため息を居つくと、頬を膨らませ、口をへの字に曲げた。
「もー、せっかく可愛く飾りつけしたのに! 後でうちも飾り付けようと思ってたけど、やーめた!」
 少女は地団太を踏みながら子供達の所へ戻ると、手に持った花を他の子供へ渡した。
「大丈夫? まだ仕事おわってないんじゃないの?」
 リハムは自分の服の端を掴んだレンの機嫌を極力損ねないようにしながら尋ねた。
「後はもううちだけだったからいいの。ね、それより、もうお稽古終わったならお菓子たべに行こうよ。シスターさんがね、飾りつけ頑張った子たちにお菓子配ってくれるんだって」
 先ほどのむくれ顔は何処へ行ったのか一転して、いたずらっぽい笑みを浮かべ、レンはリハムの手を引いた。
「うーん、俺はなんもやってないから貰えないんじゃないかな」
「もし貰えなかったら私のお菓子分けてあげるから大丈夫だよ」
 レンの歩幅はリハムの歩幅の三分の二程しかなかったので、小股で歩かなければすぐ追い越してしまいそうだった。レンの楽しそうに揺れる三つ編みを眺めながら、リハムはどこかぎこちない様子で小刻みに足を運んだ。
 しばらく歩くと、他の家より一回り程大きな建物が見えた。その下では数人の子供たちと一人の女性が楽しそうに談笑しながら、練った小麦粉を焼いたもので蜂蜜を挟んだ菓子を頬張っていた。女性は白と黒の質素なローブを纏っており、子供たちの目線と同じ高さまで身を屈ませて、優しく微笑みながら子供たちの話に耳を傾けていた。
「シスター、こんにちは!」
 レンが大きな張りのある声で挨拶する。それに釣られてリハムも小さく会釈をした。
「リハム、レンこんにちは。飾りつけが終わったんですね」
 シスターはゆっくりと立ち上がる。立ち上がったシスターはリハムの伸長をゆうに超えていた。そして、朗らかな笑みを浮かべて、リハム達へと歩み寄ってくる。
「はいどうぞ、一人一袋ですよ」
彼女は焼き菓子の入った袋を手に持ったかごから取り出すと、一つずつレンとリハムに手渡した。焼きたてなのか、まだ少し暖かく甘い匂いがする。
「そんな、俺今日の飾りつけ手伝ってないですし、もらえないですよ」
 リハムは申し訳なさそうに袋を押し返す。するとシスターは先ほど子供たちにしていたように、リハムの目線と同じ高さとなるよう少し腰を落とすと、彼を透き通った青い瞳で見つめた。
「貴方はアルトゥーロの所で稽古をしていたのでしょう。力を持つものが成すべき事をしっていますか? それは貴方の家族を、この町を、良き隣人を、大切な何かを守る良き剣になる事です。その為に貴方は稽古に励むのですよ。大丈夫、貴方は今日も立派に役目を果たしている」
彼女はリハムの髪を優しくなでながら、ゆっくり言い聞かせるように言った。リハムは自分がこの町の人々に抱いている思いをシスターに代弁され、少し気恥しく感じた。が、彼女の手に何度か触れるとすぐにその恥ずかしさもどこかへ溶けてしまった。リハムは母親の顔を少ししか覚えていなかったが、いつもこのシスターの手に撫でられるたびに、きっと母とはこのように暖かい手をしているんだろう、と思った。
 
 二人は教会を後にすると、どこに行くでもなく街をふらふらと歩いていた。
優しく語るシスターの話を聞いたのちのリハムは、時々腰に差した剣を確かめるように触るようになっていた。剣は鋼鉄でできた飾り気のない実戦的な形状で、ずっしりと重い。リハムはいつもより重く感じる剣を確かめると同時に、今までその重みをすっかり忘れていたことを少し恥ずかしく思っていた。
「おひひひゃん、どふひたの」
 唐突にレンがリハムに話しかける。口の中の先ほどの焼き菓子が唾液を吸ったせいで膨らんでおり、その顔はまるで冬眠前の動物のようだった。
「ちゃんと飲み込んでからしゃべりなさい」
リハムは吹き出しそうになるのを出来るだけ抑えるため、出来る限りの威厳のある表情をした。眉を寄せてあごをしゃくれさせ口を突き出す。鼻腔がぴくぴく震える。本人は至極真面目な顔をしているつもりだったのだが、端から見れば、どこかの国の祭りで被るおかしなお面そのものだった。そのような顔を見てしまったのだから、レンが口の中の物を思わず詰まらせてしまうのも仕方のないことだった。
リハムはなぜレンが噴き出したのか全く分からなかったが、あまりにも目の前の妹が顔を赤くしながら咳き込むので、思わず心配になりその背中を軽くたたいた。
レンは一呼吸おくと兄の腕を払いのけた。
「もう、なんで変な顔するの! もう! もう!」
 レンは若干涙目になりながらリハムを叩いた。身長差のせいで腰や腹にばかり当たる。
「いてっ、いてっ、変な顔したのはそっちだろ!」
「そんなの知らないもん! えい!」
「あふぅ!」
 尻をしばかれる兄が面白かったのか、はたまたその事自体が楽しいのか、悪そうな笑いをこぼしながらしばらくの間レンは兄を追いかけまわした。
 
 少し日が傾いてきた頃、じゃれあい疲れた二人は帰路についていた。
「なんか今日は楽しかったね。明日はお祭りだしもっと楽しいかな」
 兄とつないだ手を大きく振り回しながらレンが言った。
「できれば俺も痛くない楽しみを見つけてほしいな」
 わざとらしく尻をさすりながらリハムが言う。
「そんなに痛いの? なでた方がいい?」
 レンが心配そうにリハムの顔をのぞき込む。
「あー痛くなくなってきたー。あー治ったー」
 レンの心配そうな顔を見て満足したリハムは、さも今なおったからもう必要ない、といったように己の尻を撫でるのを止めた。
「本当は最初から痛くなかったんでしょ?」
 妹の追及を適当にかわすため、とぼけた顔をしながら歩いてると向こうから、アルトゥーロと数人の大人が歩いてくるのが見えた。彼らは顔をほのかに赤らめて大きな声で歌を歌っていた。
「お、リハムじゃないかぁ。俺、これから村長の家で前夜祭やるからさ、夕飯用意しといたから適当に食っといてくれや」
 それだけ言うとアルトゥーロは、歌を歌いながら仲間たちと、またどこかへと歩いて行った。
 ふらふらと揺れる影たちを見送ると、二人は思いつく歌をいくつか歌いながら帰路へとついた。
 
 家に帰ると二人は早々に夕飯を済ませ庭へと出た。夕飯を食べ終わった頃には、既に空は暗くなっていた。普段星が見えるはずの方角には薄い雲がかかっており、朧気に光がちらついていた。
「今日は星が良く見えないな」
二人は夜になると毎日空を眺めていた。
「なんだか雲がお月様の目を隠しちゃったみたい。悪いことしほうだいだね」
「でも今日は街の明かりが消えないから、この町じゃ難しいかもね」
「でもこれだけ暗い空なら、いくらでも星座を見れるよ。ほら、あの星と星の間は空島座で、あっちは鳥船座」
 レンが微かに雲の隙間から見える星と星を指さした。その星々間には無限の闇が広がっていた。
「ストロトツラ叙事詩の空島リバロンド奪還の所?」
「そう、そう! 『英雄は鳥船を駆りて、空の島を奪還せり』のところ!」
「じゃああっちは魔法使い座で、そっちは土巨人座だな」
「魔法使いとゴーレムは悪い奴だからあっち」
 周囲の家から賑やかな笑い声が漏れる中で二人は小さく肩を寄せ合いながら、夜の闇に空想を映しつづけた。
 
「少し眠くなってきちゃったね」
 レンが霞む目をこする。気づけば二人が空想に耽初めて数時間がたっていた。既に周囲の家のいくつかは明かりを消しており、明かりの消えてない家からも子供の声は聞こえなくなっていた。まるで世界に置いて行かれたようだった。
「風も冷たくなってきたし、俺たちももう寝ようか」
 リハムは立ちあがると、服に着いた土を手で払い落した。眠そうに顔を膝にうずめるレンを立たせようと手を差し出す。
「わたしもう少し悪い子でいたいな」
 レンはリハムの手を掴まず、代わりに霞んだ瞳で空を眺めていた。いつの間にか空の風が強くなっていたようで雲が薄くなっている。雲に隠れていた月と星が現れてレンの瞳に映っていた。
 リハムもつられて空を眺める。雲に隠れた月と幾つかの星が瞬いていた。その中に一際強く輝く二つの星が見えた。その二つの星は赤く仄暗く瞬きながら、まるで絡み合うように右へ左へと動いている。二つの星が何度か近づいた後に、片方の星が町の裏山へと落ちていくのが見えた。
「すごい、すごい! 流れ星だよ、お兄ちゃん! ねぇ見に行こうよ!」
「レンは願い事した? 俺忘れちゃったよ! 今から山に行って願い事しても大丈夫かな」
 二人は初めて見る流れ星に興奮を抑えられなかった。先ほどまでの眠気などまるでなかったかのように、二人はあわただしく家へと飛び込んだ。
「ランプと~、マントと~、剣もいるかな」
「もぉ、お兄ちゃん遅いよ、早く早く」
「ちょっと待ってよ。でもレンはパジャマのまま行くのか?」
「忘れてた。40秒で支度する!」
 レンが二回の自室へと一段飛ばしで駆け上る。布団の上のチュニックを素早く着てドアノブに掛けられた子供用マントを掴むと、今度は二段飛ばしで階段を駆け下りてきた。
 玄関ではリハムが準備を終えて待っていた。
 夜の街は静寂に包まれており、時折どこかの家から大人たちの話声が聞こえるだけだった。あまりに静かでお互いの心臓の音すら聞こえそうだった。二人ははやる気持ちを抑えながら出来るだけゆっくりと、悟られないように街を後にした。
 
 
二話
 
二人が山に入ってから幾数分経った頃、彼らは見渡す限りの緑の中を粛々と歩いていた。町を出たころの勢いはすでに無く、森に響き渡る獣のうめき声と足元の砂利とブーツが忙しなく擦れる音が夜の闇にうごめく者達の存在を示していた。
 森のなかをしばらく歩いていると、誰かがリハムのマントを強く引いた。
「こっちであってるの?」
 リハムがマントの端に目をやるとレンが不安そうな顔でリハムを見上げていた。その手には兄のマントが強く握られていた。
「方位磁石に従えばこっちのはずなんだけど」
 リハムが手の中で金属のケースに入ったコンパスをくるくると回した。しかし針は本体の動きには追従せずに、ただ一方向だけを指示し続けている。
「な?」
 彼はそれをレンに見せ大丈夫だと言うようにしたり顔をした。
「ほら、朝になる前に見に行こうぜ」
不安そうな妹の頭を撫でてやるとリハムはその手を優しくしっかりと握った。するとレンは先ほどより少し安心した様子で小さく嘆息すると、兄の手を握り返した。リハムは先ほどよりゆっくりと歩き始めると、レンもそれに従い、二人はまた歩き始めた。
 
二人がこの森に来るのは、幼少の頃に他の子供達と遊びに来た以来だった。というのも誰かがこの森には子供にしか会えない魔物がいると言い出したので、それを聞いて居てもたってもいられなくなり、大人たちに秘密に子供達だけで来たからであった。
結局誰もその魔物を見つけられなかったのだが、当時3歳程だったレンには何かを感じることが出来ていたようにリハムは思えた。しかし後から聞いてもレンは何も覚えておらず、次第に記憶も朧気になった今では、神秘的な森の匂いと、肩透かしを食らったような残念な思いだけが今の彼が記憶する数少ないこの森に関する思い出となっていた。
 
 
 神秘と言うよりは深淵。この森に入った時、数少ないこの森に関する記憶を思い出しながらリハムは感じていた。それはカンテラの明かりに照らされる樹木が死霊のはらわたに見えるほどの恐怖だったが、しかし不思議と彼の足は止まらなかった。むしろ彼の後ろでレンが小さく震える度に、進む足に力が入るようだった。
「レン、何か感じるの?」
 ふと気づくとレンが後ろで周囲を見回している。彼女は先ほどより強くリハムの手を握っており、それが彼女の不安な気持ちをリハムに感じさせた。
「ん……と、よくわからないんだけど、あっちの方で何かが怒ってるような、音? がね、聞こえるような」
 レンが指を指す方に耳を傾ける。リハムには何も聞こえなかったが、彼には妹の不安な気持ちを否定することは出来なかった。
「様子見に行ってみるよ。……レンはここで待つ?」
「や、やだよぉ! ついてくついてく、ついていきます!」
 二人は出来るだけ物音を立てないように森の奥へと進んでいった。リハムは何も感じなかったがレンは一歩進むごとに嫌そうに顔をしかめていた。子供ゆえの想像力の逞しさなのか。リハム自身も夜の家の隅に、時々恐ろしい怪物や物語を想像することがあったので、レンの闇への恐怖は理解をしているつもりだった。が、一歩進むごとに忙しなく周囲を見渡すのを見ると、それにしては今回の恐れようには食い入るような生々しさがあるように感じられた。
リハムは今まで以上に強く警戒した。彼は本来なら闇を恐れるような年齢ではない。しかし何故なのか、今までレンが強い感情を得ると決まって何か大きな事が起きるのをリハムは経験で知っていた。故に、リハムはレンの『恐怖』していることに恐怖していた。
カンテラをレンへと渡すと、リハムは空いた方の手を剣の柄へと置いた。暗闇をじっと見据えて、森の静寂へと耳を傾ける。
遠くで微かに、獣の叫び声の様なものが聞こえたような気がした。しばらく音のする方へと進んでいくと数発の破裂音が聞こえた。明らかな銃声と飛び掛かる獣の咆哮。これはもう紛れもなく人と獣の闘争の音だった。
「レンはここで待ってて、必ず迎えに来るから」
 言うが早いか先ほどの牛歩の歩みとはうってかわって、まるで機関銃の弾丸のように木々の間を音のする方へと駆け抜ける。腰で重く揺れる剣を引き抜き行く手を阻む枝を叩き落としながら目的地へと真っすぐに走り抜けた。
 
 そこには何か大きな赤く仄暗く明滅する金属の塊と、その横で何匹もの獣に今襲われんとしている一人の男が居た。まるで兵隊のような恰好をしたその男は、リハムが今まで見たこともないような形の武器を持っていた。先ほどの音とその武器からたちあがる煙から見るに銃の類であろうことはすぐわかるが、幾つもの銃口が空けられたまるでレンコンか蓮の花にも見えるソレはリハムの知っている銃とは全く違うものだった。しかし男は一向にその銃を使おうとせずに、左手に握られた短いサーベルで苦しそうに獣を捌いている。どうやら既に銃の方は使い物にならないのだろう。
獣の方はというとオオカミ、鹿、キツネなどが一同に会するという異様な光景だった。その中に一匹、一際大きな体の四本の牙を持つイノシシが存在した。周囲の獣とは明らかに異質な雰囲気を持つそれは群れから一歩さがった場所で、他の獣達に指示を出しているようにも見えた。
一匹の獣が疲弊した男へと飛び掛かかる。その瞬間男の頬を掠めて一振りのナイフが獣へ向かって飛んで行った。ナイフは獣の目へと命中し、空中で急所に攻撃を受けた獣は、そのままバランスを崩し地面へと叩きつけられた。獣たちがうろたえる間もなく森の陰からリハムが飛び出す。リハムは地面に倒れてうめき声を上げる獣へ素早く近づくと、その目に刺さったナイフを左手で引き抜いた。
「アンタは……?」
 男が血で霞む目を大きく見開く。
「良き剣…ですかね。ほら、早く逃げて」
 リハムが微かにはにかみながら、地面へと座り込んだ男に手を差し伸べる。
「残念だがそういう訳にもいかねぇんだ。後ろの飛空艇に命より重要なもんが積んであってね……」
 男は滲む血を服の袖で拭いリハムの手を掴んで立ち上がると、再び剣を手に取った。
「分かりました。でも危なくなったらすぐ逃げて」
 そう言うとリハムは、正面に獣の群れを一瞥すると大きく息を吐いた。左半身を一歩引くと腰を低く落とす。左のナイフを順手に持ち直すと剣の刃を群れに向け、獣達を正面に見据えた。
「お前たちに恨みは無いが……行くぞ!」
「ッ……おぉし、やるぞ!」
 
二人の掛け声と同時に、獣たちが雄叫びを木霊させながら渦の如くなだれ込む。血走った目で二人の男を睨みつけ、あるものは鈍く光る牙で首をねじ切ろうと大きく口を開けて、あるものは悪魔の指先のように曲がりくねった角ではらわたを抉り出そうと、どの獣も等しく怒りに身を任委ね二匹の侵略者を屠らんとかかっていく。
 リハムにとって明確な殺意をもって自らに向かってくる生き物を相手にとるのはこれが初めてであった。恐怖に心臓が爆発的に脈打ち体中の血管が、致命傷を避けるために収縮しているのが分かる。体が避けろと脳に訴える。しかし、リハムは動かない。一匹のオオカミが彼の首を狙って飛び掛かる。しかし動かない。オオカミの牙がリハムの肌に触れる寸前、リハムの目が大きく見開いた。その瞬間、彼の体が陽炎のように揺れたかと思うと、オオカミはリハムの左手のナイフへと自ら飛び込んでいった。ナイフがオオカミのあばらを通り抜け音もたてずに心臓へと滑り込む。オオカミが一瞬呻いたかと思うと、水風船に穴をあけるような感触がリハムの手へと伝わった。その感触がリハムのこれまで培ってきた知識と知恵を技へと変化させた。
 オオカミが地面へと倒れ込む。倒れた同胞の意を汲むように更に猛り狂った獣たちが二人へと襲い掛かかる。するとリハムが男の前へと進み出た。
「俺が捌くので、とどめを刺してください!」
 リハムは飛び掛かってくる獣たちを、左右の刃で地面へと叩き落とす。何匹かはすぐに立ち上がりまた彼へと攻撃を仕掛けるが、いくら傷を負っていたとしても軍人、男が瀕死の獣程度を通すはずがなかった。怒り狂う獣たちに比べ、この人間達はあまりにもクールだった。勿論彼らが感情を無くしたわけでは無いが、それでもあくまで人間たちは機械的に効率的に、皮を裂き、骨を断ち、肉を解体し続けた。
 
 気づけば獣の数は既にごくわずかで、残るは巨大なイノシシと手負いの獣が数匹残るだけとなった。
 獣と人間の間に一瞬の静寂がながれた。リハムはこのまま獣が退く事を望み剣を静かに下げた。
しかし既に獣は怒りに狂っていた。
一瞬のスキをついて獣が動いた。巨大イノシシがその巨体に見合わぬスピードで二人の方へと突撃してきたのだ。
 リハムは素早く態勢を立て直すとこれまでと同じように攻撃を受け流す体制に入り、男はとどめの準備を始めた。血に濡れた刃と牙が、最後にもう一度だけ交わろうとしていた。
 
人間の作り上げたシステムの一つである流れ作業、これは人間を一つの工作機械のように扱い同じ作業を繰り返す方法だ。故に、致命的な失敗を犯すリスクが少なく、また技術の熟成や効率にも非常に優れている。今回の彼らの戦闘法は奇しくもこの流れ作業に非常によく酷似していた。故にこの戦闘において二人は大きく消耗せずに戦い続けることが出来た。
しかしだからと言って常に優れているわけでは無く、もし、この方法の欠点を上げるなら、『画一化された作業故に規格に合わない工程は対処できない事』、『同じ作業を続けるが故に作業者の集中力が低下し、とっさの判断が遅れること』の二つを上げることが出来る。
この時このイノシシの獣の行動は、そもそもが対人間用の剣術であるものを無理やり対獣に合わせていたリハムに対しての『規格外』であり、また『予期せぬ事態』であった。
 リハムと男の体が宙へ持ち上がる。そして次の瞬間に体は地面へと叩きつけられた。肺の空気が衝撃で漏れ、意識はまるで泥の中を泳いでいるようだった。
 幾数分の間理性によって抑え込まれていた恐怖が、リハムの脳裏に思い浮かぶ。数分前は守るべき対象と、それを行使する力があった。しかし、男は先ほどからの傷もありもうすでに意識は無く、またリハム自身も剣を振る力さえ残っていなかった。
 それでも彼は必死に意識を繋ぎ止め、考えつづけた。するとふと視界の端に、赤く仄暗く光る鉄の塊があることに気づいた。先ほど男はそのなかに重要なものがあると言っていた。軍人らしき男の、命より重要なもの———軍の何かの機密か、あるいはそれ以外か、リハムは最後にそれに掛けてみようと考えた。
 イノシシは哀れな虫を見るようにリハムを見ていた。きっと殺すときはいたぶって殺すのだろう。しかしリハムはそんな獣には目もくれず、足を引きずりながら鉄くずへと這いよった。
 近くで見ると鉄くずは、古い時代の飛空艇であることが分かった。なるほど、男はこれで何かを運んでいたのだろう。
 リハムは最後の希望を託して赤く仄暗く明滅する飛空艇へその身を投げ込んだ。
 
 飛空艇へ飛び込むとリハムは素早く扉を閉めた。頑丈な鉄製の扉で、数分の間ならあの猛獣からの猛攻にも耐えられるだろう。
 荷室へと通じる扉をあける。中は思った以上に暗く手探りで調べるほかなかった。
 人が一人入れるかどうかといったような荷室を這うように調べると、明らかに厳重に保管されているものを発見した。布を外して荷室から引きずりだす。それは金属の箱であった。
 箱の大きさはリハムの身長と同じ程度であり、表の面に位置する蓋にはガラス製の窓がはめられている。蓋はいくつかの留め具で固定されていたが、何とか開けることは出来るだろう。
もやは猶予は無かった。リハムは中身を確認もせず留め具を剣でこじ開けた。
 
  箱の中には美しい少女が横たわっていた。武器の類は1つも無く赤いシルクのシーツの上にただ1人の美しい少女が眠るように横たわっているだけだった。
  危機的状況でありながら、リハムはその少女に見入ってしまっていた。銀色の雨のような髪に、透き通るような雪の肌、体は大きなマントで覆われて見ることはできないが、きっと空を飛ぶ白鳥のような手足をしているのだろう。
  何分経っただろうか、飛空挺の扉が吹き飛ばされる音でリハムは引き戻された。死が寸手の所まで迫っていた。
 

小説的なアレ「SF」

プロローグ
 
 ただ故郷に帰りたかったんだと思う。
 実際にその時代に生きてた訳じゃ無いけど。
 ただ私は、誰もが感じる田舎の砂利道や錆びた歩道橋の「懐かしさ」とか、そういう匂いを感じたかった。
 
 私は生まれてから一度も野生の動物を見た事が無い。学校のクラスメート達もみんな見た事が無いと言っていた。お爺ちゃんやお婆ちゃんは小さな頃に虫を見た事があるって言ってたけど、それも本当に小さな時の事で、気づいたら虫どころか、街中の電柱に止まるカラスさえも見なくなったと言っていた。
 そんな話を思い出しながら私は、エアコンの冷たい風で結露して曇った窓の向こう側でボヤけてるコンクリート製の塀を眺めていた。
 
今では殆どの動物は、あの塀の向こう側でしか見る事が出来ない。それも余程の事が無い限りは塀の上に備え付けられた防衛用の設備が自動で処理をするから、わざわざ見に行ったりでもしない限りは、人間が見る必要も無いらしい。
「ねぇ、動物ってそんなに危険なの?」
 ついさっきの歴史の授業で塀の話が少し気になった私は、幼馴染のサトウに聞いた。
「お前、さっきの授業寝てたのか?人間を食うんだぜ?危険に決まってるだろ」
「でも、昔はそんな事もなかったんでしょ?そりゃ人間を襲う熊とかがたまに出たってのは知ってるけど」
「そりゃ昔はな。でもそれは食いっ気だろ。今塀の外に居る動物が持ってるのは人間への殺意だろ。だからあの防護壁やロボパトが出来たんだって言ってたろ」
 そうだ。あのコンクリート塀の向こうにいる生き物はマンガや映画に出てくるような動物じゃない。人間への明確な敵意を持った敵だ。最も何故そんな敵意を持つのかは分からないらしく、ウイルス説や進化説、突飛なものでは地球の意思だ、なんていう人も居る。
見た目は普通の動物なのに、「人間への敵意を持っている」というその一点でのみ、それ以前の生き物とは違うその生き物は、私達の親世代が丁度今の私達お同じ位の年齢の時に発生したらしい。敵意というその一点でのみ他の動物と区別されたそれらは、結局その一点のみの違いしかない為に他の動物との区別も難しく、他の動物と明確に区別される事もなく『動物』と一括りにされたまま、それまでの動物も巻き込んで街から消された。
でも、だからといって人間の生活はそれ以前と大きく変わる事はなく、変わった事といえば、街中に野生動物が居ない事と、あの大きな塀ができた事、あとは市外でロボットがパトロールを行うようになった事くらいだ。
結局のところ私たちの生活はそれ以前と同じく都市管理人工知能とロボット達に支えられているという点では何も変わっていない。塀の向こう側での機械の仕事に、食品の加工以外に、パトロールが加わっただけだ。
「そんなもんなのかな」
「そんなもんだろ……ん、午後は移動教室か、そういや」
「あ、忘れてた」
 いつの間にのクラスメート達は移動先の教室へ向かったのだろうか、気づいたら私とサトウしか居なくなっていた教室で、そんな取り止めのない会話をしながら、私は面倒そうだと言わんばかりのサトウを急かすように次の教室へと早足で向かった。